【完】そろり、そろり、恋、そろり
どの位の時間が経過しただろうか。いつの間にか私に覆い被さったままの彼の首に腕を回して、自分からキスを求めていた。キスはどんどん深くなっていく。


ちゅっ、と音をたてて触れるだけのキスをしたかと思ったら、唇が離されてしまった。急に感じなくなった彼の熱に寂しさを覚え、一瞬腕を解くのを躊躇ってしまった。


そんな私の様子に気づいたのか拓斗君は、目を細めながら、くすりと笑った。


「……そんな不安な顔をしないで」


そう言いながら、私の髪を撫でるように梳いていく。やばい……ものすごく気持ちいい。温もりをもっと感じたくて、彼の掌に私の掌をそっと重ねるように添えた。


私の行動に、目の前に拓斗君は驚いたように目を丸くした。


「ずるいな麻里さんは。……もう覚悟してね」


ため息を吐きながらの言葉。どういうこと?と聞き返そうとした口を、また塞がれてしまった。重ねていた掌は、いつの間にかぎゅっと握り締められていて、そしてしっかりとベッドに縫い付けられていた。


今度のキスは、少しずつ下へと移動していった。拓斗君は私の首筋に顔を埋めてしまっている。


「……ん…っ」


我慢できなくなった私は、声を漏らしてしまった。恥ずかしいから、堪えていたのに。彼から与えられる快楽に負けてしまった。


「……感じてる?」


普段より少し低くて色気を纏った声を彼は私の耳元で響かせる。そして、耳朶を銜えた。私の身体は正直で、彼の行動にビクリと跳ねた。


「……///」


一気に顔に熱が集中したのを感じた。気持ちいいからこんな反応しているのを彼は気づいているはずなのに、わざと聞いてくる。妖しく笑う彼の目を真っ直ぐには見ることが出来なくて、目を逸らしてしまった。


「え?こっちがいいの?」


クスクスと笑いながら私の反応を楽しんでいるのか、横を向いてがら空きになってしまった首筋へと再び唇が降りてくる。


「…ち…ちがう」


「可愛いな、もう」


首筋から鎖骨へとキスが降りてくる。いつの間にか着ていたワンピースは捲くり上げられていて、彼の空いている左手が侵入してきていた。直接肌に触れる掌の存在で初めて気がついた。身体を痺れるような感覚が走った。
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