【完】そろり、そろり、恋、そろり
2人の話も聞いて、礼央が勤務していると以前言っていた病院と拓斗君の勤務先が一緒だったことに、たった今気がついた。


一つしか歳が変わらない礼央と拓斗君は、ただの知り合いどころか、プライベートでも仲が良いと言う。よくよく拓斗君が聞かせてくれる職場の人の話を思い出す。そういえば、仲のいい同僚が2人と先輩1人の4人で飲んだりすることが多いと言っていた。その先輩が礼央だったらしい。


「まさか、麻里が大山の噂の彼女だとは思わなかった」


「私もまさかだよ。礼央と繋がっているなんて考えてもみなかった」


本当、世間って驚く程狭いね。


「せっかくだし大山さんも呼び出しましょうよ。もちろん私たちが一緒なのは内緒で。きっと驚きますよ」


そんな提案をするのは、にっこりと可愛い笑顔で美沙さん。いたずらでも思いついたように、楽しそうに笑っている。


「じゃあ俺が呼び出すよ」


私は了承していないのに、2人の中では既に決定稿らしく、どんどんと話が進んでしまっている。職場の人と拓斗君がいるところも見てみたいという気もして、まあいいかと意義を唱える事は止めた。


礼央はさっそくスマホをスーツのポケットから取り出して、電話を掛け始めた。私はそんな様子を呑気に眺めていた。


拓斗君には悪いけど、この状況を私は確実に楽しんでいる。
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