飴と道楽短編集
昔、大ちゃんが言ってたのを思い出した。
虹の下…
光りが出てる所だろうな…
そう勝手にあたしは解釈してた。
夕立の後。
まだ酷く曇天が残る空の下、確かにそれは出ていた。
かなり大きい。
が、勿論遠い……
住宅街から近隣の川まで掛かっている。
「あの下に、幸せが…」
デスクに頬杖を付きながら無意識に呟く。
もうすぐ定時。
仕事終了の前に、窓の前の席の部長が明日の連絡をまくし立てていた。
「聞いた事あるそれ、あれの下に幸せって…」
隣のデスクの子が振り向いて笑う。
「でも実際さぁ、リアルタイムに下なんか行けないよね〜」
確かに。
この距離からあの光まで辿り着く前に、見えていたものは消えるだろう。
儚い七色は……
触れる事を許さない。