飴と道楽短編集
そこには煌めくバスルームが広がっていた。
丁寧に磨かれた湯舟に始まり、水垢のない洗い場と風呂桶。
ほのかに彩るフローラルの香り。
ご丁寧にカビ○ラーまでしてあるらしく、白い歯の様なゴムパッキンが輝いていた。
「…凄!!!」
業者以上の仕事っぷりだ。
まさに作り立てほやほやの如く素晴らしい風呂場がそこにあった。
「あっ、今日も来てくれたの?ありがとうー」
「いえいえ、お礼なんて」
あれからたまに「それ」はやってくる。
風呂場の扉越しだと、なんだかとっても好青年な影に見えるそれ。
声もちょっとカッコイイ。
でも。
「駄目よ……絶対開けちゃ駄目よ私!!」
洗濯機のスタートボタンを押しながら私はそう言い聞かせた。
風呂場の扉の向こうには、あのおぞましい姿が在るのだから……
―おわり―