逆境の桜
。*晋作side*。
「それが本音がかえ?」
いつの間に酔いが覚めたのか、坂本さんは真剣な顔をして言った。
「本音....な訳....ねぇよ....」
「何で嘘ついたが?」
坂本さんには話していいかな。
何でかはわからねぇが、なんとなく聞いてもらいたかった。
「実は俺....最近咳が止まらねぇんだ。微熱も少し続くし。んで、二日前に....俺....吐血したんだ....」
「なっ!高杉!おまんまさか!」
「ハハッ。そうだ。俺は労咳だ。」
「そんな....労咳っちゅうたら不治の病....」
「そういう事。それだけじゃない、労咳はうつるんだよ。だから....俺は....桜を好いてるから....っ....」
「そおかえ....。だがあ、わしはやっぱり嘘はいかんと思うが。嘘は付く側も付かれる側も辛いが。もおいっぺん考えるが。」
「坂本さん....ありがとよ。でも…」
"これで良いんだ…………"
そう言って切なげに睫毛を伏せた。
「…………おう。また何かあったらわしに言うが!これでわしは失礼する。じゃあな高杉。」
坂本さんが出たのを確認すると俺は膝をついて泣いた。
「ごめんな....桜....」
晋作は桜を想い、桜は晋作を想い、雨の下で泣いていた。
お互いの想いは届くことなく雨と一緒に流れていった。