逆境の桜
私は屯所に戻ると絶句した。
何故なら佐之こと原田左之助率いる十番組の隊士達がボロボロになって帰ってきたからだ。よく見れば組長の左之も怪我をしている。
いったい誰が何故こんな事を........
「左之っ!何があったの?」
「会津兵の....奴らが幕府....を裏....切ったと思い込み新選....組を襲って....来たんだ....。」
....は?何故裏切ったと....?
........まさかっ!
「土方副長っ!しばらく屯所を開けます!」
「待てっ!」
私はそれだけ告げると急いで屯所を出ようとしたが土方によって阻止された。
「何ですか。」
「おめぇ、俺等を騙してねえだろうな?」
私はこの時純粋に悲しかった。
会津に裏切られたのかもしれないと焦っているのに新選組にまで疑われそうになったのだから。
「いえ。私も今混乱しています。今すぐ松平公の元へ向かいます。」
「一人で行くのか?」
「いえ、私には沢山の仲間がいるので。」
「そうか。」
「副長....1つ聞いても宜しいですか?」
「何だ。」
「もしも....私が会津に裏切られていたら新選組はどちらに着きますか?」
土方は少し考える素振りを見せると迷いのない目ではっきり言った。
「俺等はお前と手を組んだ。今は仲間だ。仲間を裏切るなんざ汚ねえ真似はしねえよ。」
目頭が熱くなるのを私は必死に堪え笑顔でいった。
「必ず戻って参ります!」
「あぁ。」
土方の返事を聞くと私は走り出した。