リリと日々

人間との出会い

「あっ、怖がらせてしまったね。ごめんごめん」
その人間はリリが怒っていると悟るとすぐに距離を置いた。しかしリリを怖がっている様子はない。
リリが少し怒りの表情を和らげると人間はリリの目をまっすぐに見据え、やがてゆっくりとまばたきをした。
まるで
安心して。僕は敵じゃないよ。
と言っているかのようだった。

今までの人間は警戒心の強いリリのような猫には見向きもしなかった。
人間は皆愛嬌を振りまく可愛い猫が好きなんだ。
そう思っていた。

人間がリリに手を伸ばす。

爪を出してひっかいてやろうか。そう思ったけれど思い直して鼻をすり付けてみた。人間は優しくリリの鼻筋に触れ、ひたいから頭にかけてを撫でてきた。
ずっと野良猫をしてきたリリが初めて人間に身体を触らせた瞬間であった。