桐の花
「本当にお綺麗でいらっしゃいますよ。真一様もさぞお喜びになられるでしょう。」


真利江がそう言うと雛子がぽっと頬を染めた。


「…だといいんだけど…。」


その雛子の嬉しそうな顔を見て真利江は心を痛めた。


今日は結婚式だというのに、真一は昨日の夜も外泊していてまだ家に戻って来ていない。


(結婚式には間に合うように帰っていらっしゃればいいのだけど…。)


雛子との結婚が決まってからも女遊びをやめようとしなかった真一。むしろ前より酷くなったような気さえする。


真利江は雛子を一目見て気に入った。というよりこの寂しげなそして純粋な目を持つ人形のように可愛らしい少女を見て好きにならない者などいないと思う。


しかも雛子は見た目そのままの純粋な性格だ。


「さ、雛子様、ほんの少し香水をつけましょう。」


真利江はシュッと小さなガラスの瓶からジャスミンの香水を吹きかけた。


「うわあ…。素敵な香り…。」


うっとりするように目を閉じる雛子。


真利江は雛子に幸あれと願わずにはいられなかった。





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