桐の花
「はい。分かりました。おばあさま。」


そう元気よく答える雛子はまだ本当に幼い。


雛子の父が亡くなるまで箱入り娘として育てられて来た雛子。自分を傷つけるものなどこの世に存在しないというように綺麗に澄んだ目をしている。


雛子の夫になる人が、この雛子を可愛いと思ってくれれば良いのだけれど…菊枝は思った。


真一は雛子より十二歳も年上だ。もしかしたら雛子のことを子供っぽすぎると思うかもしれない。


真一があちらこちらで浮き名をながしていることは菊枝の耳にも入っていた。それでも雛子との結婚を了承したのは、桐山家を残したいという自分勝手な思いだったのかもしれない。


でも…。裕福な笹川家に嫁げばとりあえずは雛子も路頭に迷うようなことはない。これで良かったんだと菊枝は自分に言い聞かせる。



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