桐の花
「でもおばあさま…。雛子はおばあさまとあまり会えなくなるのは寂しいです。」


雛子はそう言って長いまつ毛を伏せた。


「何を言っているの。これからはあなたたちの時代なの。雛子が幸せになってくれれば私もそれが一番嬉しいのよ。いろいろな経験をして、それからそのうち孫の顔を見せてくださいね。」


菊枝がそう言うと雛子は元気よく頷いた。


そんな雛子の様子に菊枝は一抹の不安を感じる。幼い雛子は、きっとどうしたら子供が出来るというようなことも知らないのだろう。


「ま、とにかく最後の一日、何をして過ごしましょうか。」


菊枝がそう聞くと、雛子はふわりと笑って答えた。


「雛子は普通の一日を送りたいです。おばあさまと一緒にお料理をしたり、お裁縫をしたり…。」




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