桐の花
その夜、雛子と菊枝は布団を並べて寝た。


しんしんと冷える冬の夜。


「おばあさま…。」


聞こえて来る雛子の小さな声。


「雛子さん、明日の朝は早いのですよ。早く眠らなければ…。」


「おばあさま、真一さんってどんな方なのでしょうか…。」


雛子は真一に一回だけ会ったことがある。たった数分のみだったが。


「おばあさまはおじいさまのことをお小さい頃からご存知だったのよね…。」


雛子はそう言ってため息をつく。


「真一さんが良い方であればいいのだけど…。」


それが雛子の本音だった。大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせていても、こんな寒い夜はふと不安になることがある。


「大丈夫ですよ。真一さんのおっしゃることを聞いていれば間違いありません。夜もきっと…雛子の慣れないことが多いかもしれませんが、真一さんは悪いようにはなさらないはずです。だから真一さんの言うことを聞いて全てお任せすればいいんですよ。」



「おばあさま、手を握ってくださる…?」


雛子が布団の中からその手をそっと差し出した。


嫁ぐとはいえ、まだ16歳になったばかり。


菊枝は励ますように雛子の手をぎゅっと握った。



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