桐の花
笹川家に着くと、大勢の者達が雛子のことを迎えたが、その中に真一の姿はなかった。


目に見えて落胆する雛子。


「真一様はもう式の準備をなされているかと…。」


木下がそう言うと雛子は納得したようにうなずいた。


「そうよね…。とてもお忙しい方ですものね…。」


雛子はすぐに着替えのために部屋へと連れて行かれた。


「うわあ…。」


部屋にかかる白いウエディングドレスを見て雛子は目を丸くした。


「真一様が雛子様のためにフランスからお取り寄せになったドレスでございます。」


結婚が決まってからすぐ雛子の元に木下が服飾店の店主を連れて来てあちこち採寸していったのはこのためだったんだと思う。


「これを…私が…?」


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