だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「それが悪い事だとは思わないよ。思いやりってことでしょ?でも『思いやり』と『遠慮』は別物だって、ちゃんとわかってる?」
優希の言葉はいつも、少しだけ私を苦しくさせる。
私のことも湊の事も知っているからこそ、言える言葉だとわかっているから。
「わかってる、つもり」
出た言葉は消え入りそうなほど自信がない声になってしまった。
目を合わせていられなくなって、カウンターの目の前に並ぶお酒の瓶を眺めていた。
「私はよく喧嘩するよ。みっちゃん、結構ひどいこと言ったりするだから」
みっちゃんと言うのは優希の彼だ。
充(ミツル)君はちょっと体格のいい、鍛え上げられた身体をしていたのを憶えている。
見た目と中身の優しさにギャップがあって、優希のことをとても大切にしている。
「充君が?想像もつかないな」
「でしょ?でも言い合いになったりすると『なんで俺がお前に合わせないといけないんだ!』とか言われるよ。『お互いに我慢するくらいなら、別れるか』とか」
私は思わず優希を見た。
優希は楽しそうに笑って、私と同じクラウディスカイリッキーを飲み干した。