だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
別れるか、なんて。
そんな簡単に言われたら、私の心臓はつぶれてしまうかもしれない。
それなのに、優希は『なんてことない』という顔で笑っている。
空いたグラスをカウンターに置きなおして、にっこりと笑っていた。
「別れる、って言えるのはさ。本当はそんなこと想ってない時だけなんだよね」
優希は店員さんに向かってカルーアミルクを注文していた。
それにあわせて、私も飲み物を頼んだ。
何にしようか迷ったけれど、アルファベットが印象的だったのでXYGを注文した。
「大丈夫?結構お酒強いやつだけど?」
「平気。私、お酒強いみたいだから」
そっか、と言って優希はお絞りを弄んでいた。
くるくると形を変えるおしぼりは、うさぎになったり、バラになったり。
優希の手の中でどんどんカタチを変えられていった。
「本当に別れたい時は、空気が変わるから。なんともいえない空間で、ただ息苦しい時間をやり過ごすだけ・・・みたいに」
私は一度も味わった事がないけれど、優希はそういう場面に何度も遭遇している。
優希は男女問わず友達も多い。
その中には元彼も含まれていて、私の知らない修羅場だって知っているのだ、と思った。