だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
目の前に頼んだお酒が運ばれてきた。
それを受け取って、優希は一口飲み込んだ。
「でもね、たまに思う。時雨と湊さんみたいに、言わなくても信じられることが羨ましい、って」
信じられる。
少し違うかもしれない。
信じている。
それしか、出来ないから。
「確かに我慢かもしれないけど、それが出来るほど相手を大切にしてるってことでしょ?それくらい守りたいものだ、ってわかるから」
優希はそう言ってグラスをカウンターに置いた。
そして、にっこり笑って私の顔を見た。
「いつも幸せそうだよ。二人でいるだけで」
そう見えていることが、とても嬉しかった。
きっと、私達はまだまだお互いのことを知らなくて、十六年くらいじゃ埋められないものが沢山あるのだろう。
八年付き合ってると言っても、恋人らしくなったのは高校に入ってから。
湊がどれだけ一人で頑張ってくれたのか。
今になってやっとわかるくらいだ。
そうやって大切にして、想いが積もっていったのだろう。
それは、優しく降る雪のように。
しんしんと。
そんな風に考えて、胸の奥が柔らかくなった。
静かに笑う私の顔を見て、優希が驚いたように目を見開いたけれど。
すぐに笑顔になって笑い合った。
長くなる夜が、幸せな雰囲気に包まれることを予感して。