だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
悲愴...ヒソウ
「ま、何かあったら言ってよ。もうおじさん達も知ってるなら、何もないだろうけど」
優希の言葉にどう反応していいか分からず、曖昧に笑って見せた。
確かに、前のように不安になることもない。
過去があることも、今は割り切っていける気がする。
湊が私を裏切ったりしない、とわかっているから。
久しぶりの優希との時間はとても楽しかった。
何も隠す必要がなく、何も遠慮する必要がない。
そのことは、私の気持ちをとても軽くしていた。
「ちょっと、お手洗い行ってくるね」
優希にそう告げて、カウンターを立ち上がる。
このお店のカウンターは入り口から少し離れた場所にある。
カウンターの奥と入り口側に沢山の席があり、お手洗いは入り口の近くだった。
ボックス席は入り口にカーテンを引かれた席も多く、他のお客さんと顔を合わせずにいられることが、このお店の人気のようだ。
お手洗いはとても綺麗で鏡の横に花が飾ってある。
手を洗っていると、二人連れの女の人が入ってきた。
赤い顔をした彼女達は、綺麗に化粧をして大人っぽく着飾っている。
いつかこんな風に変わっていけるかな、と思いながら手を洗っていた。