だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
オフィスに戻ってみんなにチョコを配る。
夕方のオフィスは少しまったりとしたムードに包まれている。
後二日で片付けなくてはいけないことが山積みだけれど、気分はもうお休みに浮かれているようだった。
「時雨、このデータの整理頼めるか?」
圭都が私を呼んだので、そのままパソコンを覗き込む。
画面にはウエディングフェアの制作費等、これから必要な費用の羅列がされていた。
「了解です。サーバーにあげてください。他の部署にも確認しながら仕上げます」
「悪いな、頼んだ」
そう言ってにっこりと笑う。
甘いものをあまり食べない圭都のために、机の上に小袋のスナック菓子を置く。
私がすでに半分に分けていたものだ。
「お前の分は?」
「もう分けてあります」
少し呆れたように笑いながらも目の中が優しい。
普通に接することが出来るようになったのは、圭都に余裕が出来たからなのだろう。
「櫻井さんも、年末までに頑張って少しは休んでくださいね」
「じゃあ、お前が頑張って手伝えよ」
はい、と頷いて席に着く。
『櫻井さん』と私が呼ぶごとに、水鳥さんがなんだか優しい目線を送っている。
それは恥ずかしいことだけれど、少しくすぐったいことでもあった。