だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「不安になるってことはさ、それだけ大切だと想ってるからじゃないの?湊さんの顔、いつもより少し不安そうだった」
「え・・・」
「時雨、気が付かなかったでしょ?それどころじゃなかったもんね」
不安そう。
そうだったかな、と思い出す。
私には不機嫌そうに見えたのに、優希には不安そうに見えたのだろう。
見る角度で、感じる距離で変わる。
本当に見たいものも、今見えているものも。
「ちゃんと聞いてごらん。それで、想ってること言ってごらん。新しくわかること、きっとあるよ」
新しくわかること。
優希の言葉は、いつも私の背中を押してくれる。
不安も沢山あるけれど、知りたいことも沢山ある。
そして、きっと言わなくてはいけなかったことも、沢山ある。
我慢していたことも沢山。
溢れそうな言葉たちが胸の中にある。
「そろそろ帰る予定だったし、行こうか。気になるんでしょ?」
行ってどうしたらいいんだろう。
義妹だと紹介されたのに、私に何が言えるんだろう。
でも、湊の近くに私じゃない女の人がいることに、私は気が気ではなかった。
小さく頷いて、すぐにお会計をお願いする。
二人で会計を済ませて店の外へと急いだ。