だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
深々...シンシン
エレベーターを降りてエントランスに出ると、入り口の近くに三段だけある階段に二人は座っていた。
女の人は湊にしがみついたまま、顔を胸に埋める形でいた。
湊は少し後ろに体制をずらし、彼女の背中に手を当てていた。
その光景を目の当たりにして、私は少し揺れた。
倒れそうな身体を優希が支えてくれた。
そっと背中を押されて、フラフラと二人に近付く。
何の音もしない。
静か過ぎて、気持ち悪い。
「・・・湊」
私の声は頼りなく響いた。
その声を聞いた湊は、まだ冷たいままの目を私に向けてきた。
「時雨、もう帰るの?」
女の人が何か言っていたけれど、私は湊の声しか耳に入らなかった。
冷たい声。
今の状況をわかっているのか、と問いただしたい。
他の女を支えたまま、私に向き合うなんて。
「湊、話があるの」
「わかった。でも、もう少し待って。この子をほっとくわけには――――」
「嫌」
どちらの声も同じくらい冷たく響いた。
今、引くことは出来ない。
わかってよ。
他の女に触らないでよ。