だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
進展...シンテン
あの、秋の終わり。
もう冬が近付いていたあの日。
車の中で圭都と私はどうすることも出来ずにいた。
ただ、濡れたままの身体を寄せ合って抱き合っていた。
涙が止まっても、ずっと。
それ以上どうすることも出来ずに。
お互いの呼吸と胸の鼓動ばかりを聞いていた。
「こういう時、どうしたらいい」
不安そうな声が私の耳元で聴こえた。
少し震えるような声が、私の胸まで届いた。
「私に聞かれても、困ります」
涙声のまま、背中に回した手をぎゅっと握って答える。
きっと、化粧が落ちてひどい顔をしているんだろうなと、どうでもいいことばかりが頭の中をよぎっていた。
「とりあえずここから移動するか。この格好のままじゃ二人とも風邪ひくぞ」
冷静な言葉の割りに、声が揺れているのが気になる。
目の前のこの人が、今どんな顔をしているのかもわからないまま私はただ頷いた。
と、同時に。
目の前にバサッとタオルがかけられた。
髪の毛と顔をそのまま包むように。
そして、がしがしと濡れた髪を拭かれていた。