だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
その時、ぐっと肩を掴まれてそのまま倒れそうになった。
優希の手が離れたのと湊の胸の中に納まったのは、ほぼ同時だった。
静寂の中で、湊が私を抱き締める音と湊の心臓の音が聴こえた。
「・・・っなっ!湊君、妹なんでしょ、その子!友達もいるんだし、大丈夫なんじゃないのっ!」
さっきまでの声とは違う、威勢のいい声が聴こえた。
猫なで声よりずっと素敵な声なのに、とぼんやり思った。
「それにっ!なんか近すぎじゃ――――」
「大切なんだよ。家族だから」
湊の腕に力が入る。
その腕が、私のことを恋人だと言っている。
口では家族だ、と。
でも、身体は違う、と。
「なによ、ソレッ!ただのシスコンじゃないっ!」
「時雨の家は、普通の家庭なんかよりずっと仲がいいんですよ。私は昔から知ってますから」
優希の真っ直ぐな声が響く。
さっきまで何の音もしなかったのに、今は沢山の音がする。
湊が此処にいるだけで全てが変わる。
ありがとう、優希。
私の背中を支えてくれる、優しい希望。