だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





その時、ぐっと肩を掴まれてそのまま倒れそうになった。

優希の手が離れたのと湊の胸の中に納まったのは、ほぼ同時だった。


静寂の中で、湊が私を抱き締める音と湊の心臓の音が聴こえた。




「・・・っなっ!湊君、妹なんでしょ、その子!友達もいるんだし、大丈夫なんじゃないのっ!」




さっきまでの声とは違う、威勢のいい声が聴こえた。

猫なで声よりずっと素敵な声なのに、とぼんやり思った。




「それにっ!なんか近すぎじゃ――――」
「大切なんだよ。家族だから」




湊の腕に力が入る。

その腕が、私のことを恋人だと言っている。


口では家族だ、と。

でも、身体は違う、と。




「なによ、ソレッ!ただのシスコンじゃないっ!」


「時雨の家は、普通の家庭なんかよりずっと仲がいいんですよ。私は昔から知ってますから」




優希の真っ直ぐな声が響く。

さっきまで何の音もしなかったのに、今は沢山の音がする。


湊が此処にいるだけで全てが変わる。


ありがとう、優希。

私の背中を支えてくれる、優しい希望。




< 120 / 358 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop