だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
静夜...セイヤ
「今日は、随分聞き分けがなかったけど」
静かに湊は言った。
何の感情も読み取れない声で。
私は俯いて唇を噛み締めた。
何から言っていいのか、わからなかった。
「どうしてあんなところへ?」
あんなところ?
湊自身もいた場所なのに?
理不尽に責められているような感覚に襲われて、また感情が抑えられない。
想いのまま、言いたいことを全部湊に伝えたくなってしまう。
そんなことをしては駄目だと、自分に言い聞かせているのに。
わかっていても、これ以上抑えられる自信などどこにもなかった。
「湊、自分が何をしてたのか、わかってるの?」
可能な限り感情を抑えて目も合わさずに言った。
声が震えてしまったけれど、そんなこと今は気にしてなどいられなかった。
「何って、具合が悪い人の世話をするのは当然だろう?」
そうだね。
湊は優しいから。
その優しさが、私をどんどん苦しくさせることも知らないくせに。
湊がみんなに優しくするた度に、胸の奥底から湧きあがってくる感情。
こんな感情、知らずにいたかった。
知らずにいられる訳がないと気付いたのは、さっきだけれど。