だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
優しいだけでは、いられない。
湊を好きなだけでいたいのに、それすら出来ない。
人を好きになると、自分がどれだけ傲慢で強欲なのか思い知るばかりだ、と想った。
それでも湊を好きでいたい、と。
そう想う自分を捨てることなど、絶対に出来ないと知っていた。
どうすればいいのか教えてよ、湊。
「そうだね、湊は優しいから」
「それが、どうして怒る理由になる?そんなことが」
「・・・そんな、こと?」
「優しいことの何がいけないのか、と言ってるんだけどね」
あぁ。
この人はなんて残酷なんだろう。
優しいことが悪いわけなど無い。
けれど、優しすぎることが私を苦しめることに気付いていないのかもしれない。
そんな想いを私は何度感じ、そして呑み込んできたのだろう。
もう限界。
止められないよ。
「そんなことなんかじゃないよ!どうして湊がしなくちゃいけなかったの?他にも女の友達がいたの、知ってるんだから!何で湊が支えてあげないといけないのよ!」
一度言葉を発すれば、もう止まらないことくらいわかっていた。
感情が溢れてしまえば、後は罵ることしか出来ないと知っていたから、今までずっと口を閉ざしてきたのに。
口に出してしまえば、こんなにも簡単に怒鳴り散らすことの出来る自分を、心底嫌いになった。