だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「やっと言ってくれた」




湊の腕は、さっきまでとは全く違う強さで私を抱き締めた。

私は、泣いていて苦しいのか、この腕の強さが苦しいのかわからなかった。


ただわかるのは、湊の腕が私を離さない、と言っていること。

それだけだった。




「時雨はいつも何も言ってくれないから、ちゃんと聞きたかったんだ」


「・・・み、なと?」


「ごめん、非道い事をして。でも、ちゃんと言って欲しかった。想ってることを、全部」




湊の声が、優しくなった。

いつもの私を甘やかす声になった。



もう、大丈夫なの?

一緒にいても、いいの?




「だって、こんな私・・・」


「そうなる様にしたのは、俺だから」


「でも、重いとか面倒とか・・・」


「そんなこと、誰が言うの?俺は絶対に言わない」


「私、湊を好きになり過ぎて・・・」


「もっと」


「え?」


「もっとなってよ。俺意外なんて目に入らないくらいに、さ」




そう言って、とても綺麗な顔をして笑う湊。

ぼろぼろになって涙が止まらない私の顔を、いとしそうに拭ってくれる湊。

優しくて柔らかい湊の手が、此処にある。




「ずっと・・・傍にいてくれるの?」


「ずっと、傍にいるよ」





そっと言葉が降って来る。

さっき見た、柔らかい雪のように。

晴れた空の中でふわりと浮かぶそれに、湊の言葉は似ている。




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