だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「・・・・ちょっ!自分で出来ますからっ!!」
抗議の言葉も虚しく、タオルで包まれたまま前が見えなくなってしまった。
そのまま圭都に抱きしめられて、私は真っ白な世界の中に閉じ込められた。
圭都の匂いのするタオルの中で。
「――――っっ――――」
圭都が声を堪えている。
タオルで前が見えない分、聴覚や圭都の手の感覚が鮮明に伝わってくる。
震える声。
震える手。
抱きしめる腕の強さ。
何かに必死にしがみついているようで、そっと手を回す。
けれど、まずはその顔を見たかった。
どんな顔をして私の目の前にいるのか。
抱きしめられている腕の中で必死にタオルをめくる。
押さえられて上手く出来ないけれど、少しずつずらしていく。
抵抗する圭都の力は必死だけれど、私も必死だった。
感覚が研ぎ澄まされて今はわかるから。
どんな顔をして、どんな気持ちなのか。
だから顔が見たい。
そして、そのまま私を見て欲しい。
貴方にしてあげたいことがあるから。
伝え切れなかった何かが、それで伝わるような気がしていた。