だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「気持ちは積もるんだよ。あの雪と同じように」
私の頬に自分の頬を寄せて、そっと呟く。
目線を窓にずらして外を見つめる。
その後おでこを合わせるようにして、そっと私の目を見る。
目が合うと優しく微笑んで、今度は二人で窓へ目を向ける。
音もなく降る。
白い結晶達。
「風花。晴れた空からふわりと降る雪のことを言うんだ。音もなく降って静かに積もる。それは、目に見えない僕たちの想いと同じように。時間をかけて、ゆっくりと」
カザハナ。
音もなくそれは積もっていく。
目に見えない気持ちがゆっくりと積み重なるように。
ぼんやりした頭で湊の声を聴いていた。
『俺』から『僕』に戻っちゃったなと、少しだけ残念な気持ちになりながら。
窓の外の景色は、涙で滲んでぼやけてしまった。
「重たく感じる時がないと言ったら、きっと嘘になるんだろう。でも、そんなことよりも時雨の傍にいたい。時雨は?」
優しく私を見つめる瞳が少し不安げに揺れていた。
そっと私の頬に触れ、言葉を待っている。
冷たい手が、私の頬で小刻みに震えていた。