だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
気持ちが重いと感じることもあるけれど、私の傍にいたいと言った湊。
きっとその言葉は、湊の気持ちの奥底にあるものだったはずなのに。
こんなに自分の気持ちを言ってくれるようになるなんて。
湊は自分の想っていることを言葉にするのがとても苦手なのだ。
そのことは、私が一番知っている。
そして、そんな湊に私がよく似ていることを、この人は知っている。
似た者同士だからこそ、こんな風に二人とも不器用なのかもと想った。
「私も、傍にいたい」
止まることのない涙を、湊がキスですくってくれる。
一つひとつ、優しく。
「きっとまた不安になることも、沢山あるよ。それに、もっと湊を好きになる。それでも、いい?」
湊は私の頬に触れたまま私を見つめていた。
冷たい湊の手は、まるで私の頬に『温めて欲しい』と縋っているようだった。
「我儘で嫉妬深くて、一人で不安になったり。こんな私でも、いい?」
これが、今のありのままの私の姿だ。
気持ちの奥底の自分は、誰にも触れられたくなかった。
だって、怖い。
傷つけられるのが。
だから、誰にも見せずにいたかった。
いい子の自分が剥がれてしまえば、湊は私のことを『いらない』と言ってしまうような気がしていたから。