だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
湊に『いらない』と言われてしまったら、生きていける気がしなかった。
そんなことになるくらいなら、自分が我慢をしている方が楽だったから。
いい子じゃない自分なんて、いなくなればいいのに。
そう、想っていた。
「どんな時雨も時雨だよ。誰もが持っていて当然の感情なんだよ。今まで生きて感じたその全てが、今の時雨を作ってるんだから」
全てが。
どれもが、『私』であるために必要なんだろうか。
「それにね」
「何?」
「どんな気持ちを持っていても、いいと僕は想うんだ」
「そう、なのかな?」
「だって、今は此処にいる。こうして僕の腕の中に時雨がいるんだ。それ以上に必要なものなんてないよ」
そう言って、湊は私をそっと抱き寄せた。
湊の膝に座ったままだった私は、少し身体をずらして湊を抱き締めた。
顔を寄せた湊の胸はいつもよりずっと温かかくて。
この安心感を手放すことにならなくて、本当に良かった。
「僕ももっと見せてあげないといけないね」
「・・・何を?」
「本当の自分。きっと時雨は、ちょっと僕のこと嫌になるかもしれないけど」
「そんなことないよっ」
「・・・じゃあ、試してみる?」
「・・・え?」