だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





湊に『いらない』と言われてしまったら、生きていける気がしなかった。

そんなことになるくらいなら、自分が我慢をしている方が楽だったから。


いい子じゃない自分なんて、いなくなればいいのに。

そう、想っていた。




「どんな時雨も時雨だよ。誰もが持っていて当然の感情なんだよ。今まで生きて感じたその全てが、今の時雨を作ってるんだから」




全てが。

どれもが、『私』であるために必要なんだろうか。




「それにね」


「何?」


「どんな気持ちを持っていても、いいと僕は想うんだ」


「そう、なのかな?」


「だって、今は此処にいる。こうして僕の腕の中に時雨がいるんだ。それ以上に必要なものなんてないよ」




そう言って、湊は私をそっと抱き寄せた。

湊の膝に座ったままだった私は、少し身体をずらして湊を抱き締めた。


顔を寄せた湊の胸はいつもよりずっと温かかくて。

この安心感を手放すことにならなくて、本当に良かった。




「僕ももっと見せてあげないといけないね」


「・・・何を?」


「本当の自分。きっと時雨は、ちょっと僕のこと嫌になるかもしれないけど」


「そんなことないよっ」


「・・・じゃあ、試してみる?」


「・・・え?」




< 133 / 358 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop