だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
共存...キョウゾン
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「俺に何か言うことは?」
窓を向いたままの私に後ろからそっと届く声。
さっきまでの強さではなく、優しさを含んだ声になっていた。
圭都の近付く気配を背中で受け止めていた。
この人は、いつも少し意地が悪い。
言うべきことは、さっきほとんど吐き出してしまったのに。
「何が聞きたいですか?」
結局、そんな言葉しか出てこなかった。
すぐ後ろに立っている圭都を窓越しに見る。
暗いので表情までは見ることが出来なかった。
後ろから圭都の手が伸びてくる。
私を通り過ぎて、目の前の窓に両手が置かれる。
圭都の伸ばされた腕の中に囲まれているが、どこも触れてはいない。
あの夏の日のように、私に触れない圭都。
胸を苦しくさせる距離感だということを、この人が一番知っているはずなのに。
「敬語は、やめろ」
私の質問とは全く関係のないことを言って、拗ねた声を出す。
この人は本当に正直な人だなと想う。
湊にはなかった正直さに、今はとても安心できる。
「圭都のそういうところ、とても好き」
何かを考えて今の言葉を言ったわけではなかった。
言葉が落ちた、そんな感じだった。