だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
首筋に圭都の柔らかい髪の毛が当たる。
圭都のおでこが私の肩に乗せられているのだと理解した。
そのぬくもりに、私の感覚が反応する。
意識がそこに集中しているみたいに。
「・・・反則、バカ」
「何よ、その言い方は」
「・・・ごめん、杉本のこと。俺に言ってくれればよかったのに。なんで言わなかった?」
搾り出すような声が耳のすぐ近くで聴こえて、私の胸を更に苦しくさせた。
それは、悲しさで締め付けられた苦しさではなかった。
いとしさが込み上げて、胸を苦しくさせていた。
この人に対する『いとしい』が、積もった証拠だった。
「杉本さんのように、真っ直ぐ『圭都だけ』とは言ってあげられないから。いつも甘えてばかりで、支えてもらってばかりだしね」
どうやったら大切に出来るのかを考えているけれど、結局上手く大切に出来ない自分がいた。
湊を想い出す度、圭都を苦しめているような気がして。
「圭都の言葉に甘えて『三人で生きていく』なんて。結局、圭都を苦しめるだけなのかも、って想っちゃったの」
杉本さんに言われた言葉が頭を回っていた。
『圭都にとって、何が一番幸せかってことを』という言葉。
ずっと、考えていた。
『圭都の幸せ』が、何かを。