だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「圭都にとって一番幸せなことを考えて、って。杉本さんに言われたの」
窓に置いていた圭都の手が、私の身体を抱え込んだ。
手のひらが服越しにもわかるくらい冷たくなっていた。
首元の近くにある圭都の腕にそっと手をのせる。
一人で立っていた時の寒さは、どこかへ行ってしまったみたいだ。
「わからなかった。何が圭都にとって良いことなのか」
一緒にいることが、必ずしも幸せなわけではないかもしれない。
けれど、手放す勇気なんてない。
同じくらい支えてあげる自信もない。
どうすればいいんだろう。
自分の中で葛藤している気持ちを、上手く整理出来ずにいた。
「ただ、傍にいたい」
結局は、とても簡単なこと。
難しいことなんて何一つ考えていない。
「誰よりも好き、とは言ってあげられないかもしれない。でも今、圭都が一番大切。『好き』と胸を張って言えるよ」
何かに重ねて湊を想い出すことが沢山ある。
それを、そっと隣で支えてくれている。
それだけで気持ちが満たされる。
何もしてあげられないのかもしれない。
だからこそ、伝えたいと想った。
大切なのだ、と。