だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「俺も一緒に暮らしてみたいんだよ」
少し掠れた声が、苦しそうに吐き出された。
家族以外の誰かと一緒に暮らすこと。
それは、私にとっても初めてのことだった。
同じ家から出かけて同じ家に帰る。
帰る場所が一つになる。
それは、これから先もずっと続いていくのだろうか。
頭を巡るのは『いつか』という不安。
考えても仕方のないことばかりが、私の中に沢山あった。
『いつか』一緒にいられなくなったら。
『いつか』二人の気持ちが離れてしまったら。
『いつか』距離が近すぎて重たくなったら。
これから変えていける未来のことを、どんどん悪い方に考えてしまうのは私の癖だ。
湊がいなくなってから、その考えはどんどん膨らんでいくばかり。
怯えてばかりいる自分がいることを、この人に伝えなくては。
「一緒にいたい」
気持ちとは裏腹に、口から出る言葉はいつも簡単だ。
前よりもずっと圭都に甘えているせいか、言いたいことが簡単に零れてしまう。
圭都の腕が緩んで、向かい合わせに立たされる。
真っ直ぐ前から見つめる目に、迷いの色はなかった。
「一緒にいろよ」
目を逸らさないまま、私は小さく頷いた。
自信満々に笑う圭都と私を掴むての震えがアンバランスで、そのことが圭都の真剣さを際立たせていた。
けれど、言わなくてはいけないことがる。
絶対に伝えたいこと。