だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版



「でも、不安なの」


「何が不安だ?言いたいことは言え」




私の発した言葉に、圭都は動じたりしなかった。

静かに私の両手を握って、下から覗くように少しかがんで私の顔を見た。


ぶっきらぼうな物言いに優しさが含まれていて、促されるまま私は圭都を見つめ返した。

圭都の表情に不安の色はなかった。



しっかりと先を見据えているこの人は、出逢った頃から変わらない強さを持っている。






冷たさが増す。

凍える夜を、

何とかやり過ごさなくては

と想う。




ここにある、

温かいぬくもり。

それに縋りつくことに、

慣れたくなくて。




静かに降る。

風花が。

私の不安のように。

圭都の想いのように。

湊の、想い出のように。




見えない間に積もるのは、

やっぱり見えない何か。

それの正体を確かめることが出来ないまま、私達はいつも傍にいる。



見えないからこそ、一緒にいられるのかもしれない。

押し寄せる何かに気付いた時、人はどうやってそれを受け止めるだろう。


私には、それを受け止める準備など何もなかった。

不安や、絶望や、恐怖を。


苦しくて、目を背けたいモノたちを。




< 144 / 358 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop