だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「でも、不安なの」
「何が不安だ?言いたいことは言え」
私の発した言葉に、圭都は動じたりしなかった。
静かに私の両手を握って、下から覗くように少しかがんで私の顔を見た。
ぶっきらぼうな物言いに優しさが含まれていて、促されるまま私は圭都を見つめ返した。
圭都の表情に不安の色はなかった。
しっかりと先を見据えているこの人は、出逢った頃から変わらない強さを持っている。
冷たさが増す。
凍える夜を、
何とかやり過ごさなくては
と想う。
ここにある、
温かいぬくもり。
それに縋りつくことに、
慣れたくなくて。
静かに降る。
風花が。
私の不安のように。
圭都の想いのように。
湊の、想い出のように。
見えない間に積もるのは、
やっぱり見えない何か。
それの正体を確かめることが出来ないまま、私達はいつも傍にいる。
見えないからこそ、一緒にいられるのかもしれない。
押し寄せる何かに気付いた時、人はどうやってそれを受け止めるだろう。
私には、それを受け止める準備など何もなかった。
不安や、絶望や、恐怖を。
苦しくて、目を背けたいモノたちを。