だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
圭都の少し熱を持った左手が、私の凍える右手を掴む。
いつもとは逆の温度になんだか違和感を感じた。
圭都は近くにあった椅子を引いて、私をそこに座らせた。
しゃがみこんで私を下から見上げる圭都。
その目には、優しさが滲んでいた。
私は笑うことも泣くことも出来ず、ただ無表情のままそこに座っていた。
いつもより低い位置にある圭都の顔に、掴まれていない左手を寄せた。
頬に手を当てると、圭都は嬉しそうに微笑んだ。
「時雨が望むなら、ずっと一緒にいるさ」
圭都の声は、何一つ迷いのない声だった。
今まで聴いたどんな圭都の言葉よりも、透明で眩しい言葉だった。
気付けば私は圭都へと両手を伸ばし、圭都の頭を抱き締めた。
その感覚がまた少し胸を締め付けるけれど、それすら『いとしい』ものだと理解した。
腰に回された圭都の腕はいつもよりも優しくて、まるで私を支えてくれているようだった。
強い力でないことが、余計に私の胸を苦しくさせることを、この人は知らない。
泣きたくなるくらい安心していることを、この人はまだ知らない。
悔しいから、当分はこのままでいるつもりだ。
そんなことを言ったら、調子に乗ってしまいそうだから。