だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「そういえば、準備は進んでる?忙しいから大変でしょう?」
会社を出てお昼を買いに行く途中、水鳥さんが私に問いかけた。
相変わらず水鳥さんには筒抜けだなと思いながら、少し笑ってしまった。
「なんとか、と言いたいところなんですけど・・・。仕事がこの調子じゃ難しいですね」
「そうねぇ。毎年この時期は忙しいし、春になってからでもいいのに。ね?」
にこにこと笑っている顔は明らかに楽しそうだ。
水鳥さんはいつにも増して輝いているように見え、その顔は楽しくてたまらない、という顔に思えた。
「水鳥さん、絶対私達のことからかってますよね?」
「あら、いいじゃない。もう部署公認、みたいな感じなんだから」
そうですけど、と小さく反論をして困ったように笑って見せた。
まだ照れくさいのがわかっているくせに。
わざとからかう様子の水鳥さんが、とても水鳥さんらしくて嬉しいのも事実だった。
寒いけれど今日は天気がいい。
歩道のアスファルトは雪が溶けて、お日様の光を浴びて乾いていた。
社内履きのパンプスでも十分に歩けることが、私の気持ちをとても明るくしてくれた。