だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「どうかした?」
空を見上げたまま、白い息と一緒に言葉を落とす。
たばこの煙と私の息の白さが混ざって、目の前が白く濁った。
目を合わせることもせず、ただ空を見つめていた。
「俺達のこと、部署のメンバーには話しておくか」
圭都はポツリと呟いた。
さっきから考えていたのはこの事だったのか、と納得がいった。
隠しておけるなら、そのままの方がいいという気持ちもある。
けれど、知っていてもらうことで助けられることも多いのだろう。
どちらも大切なことだと、今はわかっていた。
「うん」
小さく同意の言葉を落とすと、圭都は私の方を向いた。
少し意外そうな顔をして。
「どうしたの?」
「いや、もう少し考えるかと思ってた。案外あっさり了承するんだな、と思って」
そう言って、たばこを灰皿に押し付けた。
焦げた匂いはあまり好きではない。
その煙は、冬の空気が連れて行ってくれた。
「だって、別に悪いことをしてるわけじゃないし。うちは社内恋愛禁止じゃないから、いいかなって。」
うちの会社には社内恋愛をしているカップルが沢山いる。
堂々としていて、いっそ清々しいと思う。
そこが、うちの会社のいいところなのだから。