だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版





「どうかした?」




空を見上げたまま、白い息と一緒に言葉を落とす。

たばこの煙と私の息の白さが混ざって、目の前が白く濁った。

目を合わせることもせず、ただ空を見つめていた。




「俺達のこと、部署のメンバーには話しておくか」




圭都はポツリと呟いた。

さっきから考えていたのはこの事だったのか、と納得がいった。


隠しておけるなら、そのままの方がいいという気持ちもある。

けれど、知っていてもらうことで助けられることも多いのだろう。


どちらも大切なことだと、今はわかっていた。




「うん」




小さく同意の言葉を落とすと、圭都は私の方を向いた。

少し意外そうな顔をして。




「どうしたの?」


「いや、もう少し考えるかと思ってた。案外あっさり了承するんだな、と思って」




そう言って、たばこを灰皿に押し付けた。

焦げた匂いはあまり好きではない。

その煙は、冬の空気が連れて行ってくれた。




「だって、別に悪いことをしてるわけじゃないし。うちは社内恋愛禁止じゃないから、いいかなって。」




うちの会社には社内恋愛をしているカップルが沢山いる。

堂々としていて、いっそ清々しいと思う。


そこが、うちの会社のいいところなのだから。




< 152 / 358 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop