だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「それに、胸を張って『恋人です』って言いたい・・・かな」
さっきまでの自分の気持ちが、溢れたまま言葉になった。
嫉妬や焦燥を感じていたのは杉本さんだけではない。
私だって、同じ気持ちを持っていたのだと気付かされた。
湊以外の誰にも向けたことがなかった感情。
私の心が、今。
生きている証。
「・・・あ、あぁ」
間の抜けた声が横から聴こえて、目線をそちらへ向ける。
真っ直ぐ目が合うと圭都はふいっと視線を逸らした。
逸らした顔は、少しだけ赤くなっている気がした。
久しぶりに見た慌てた様子に、私は可笑しくなり笑いを必死に堪えていた。
時折くすくすと漏れる声に、少しむっとした様子で圭都がこちらを向いた。
「笑うなよ」
拗ねたような声で小さく言って、もう一度たばこに火をつける。
そのたばこを奪い取って私は大きく吸い込んだ。
久しぶりに肺に広がる感覚が、冬の空気の冷たさと混ざり合って心地いい。
冬。
外の空気。
たばこの煙。
晴れた冬の夜にだけ、私はたばこを吸いたくなる。
なぜだか分からないけれど。
ただ、初めてたばこを吸った日も、こんな風に晴れ渡った冬の夜だった。