だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「久しぶりに見たな、たばこ吸うの」
圭都は物珍しそうな顔で私を見ていた。
その顔に少しだけ笑って見せて、私はまた空を仰いだ。
ここは星が少ない。
街の明かりが多いわけではないが、いつも明るい気がしていた。
「時雨でも、そんな風に思ったりするんだな」
心底感心したように、圭都はぼそっと呟いた。
少しだけ目線を向けると、新しいたばこに火をつけて白い息を吐き出していた。
「意外ですか?」
「意外だな」
「私もです」
にっこり笑って圭都に言うと、圭都はきょとんとした顔をしていた。
私の返事が予想外だったのだろう。
その顔が私にだけ向けられている表情だということを、しっかりと理解していた。
「嫉妬とかそういう感情は、もう湧いてこないと想ってたんだけど」
「そうなのか?」
「うん。自分にとって煩わしい感情で、無くなってほっとしていたのに」
自分がどんどん重くなる感覚を味わうのは、息が苦しくなるだけだった。
そういう感情が消えた時、私はとても自由になれた気がした。