だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
水鳥さんの言葉を飲み込むように、大きな口でかぶりついたサンドイッチを飲み込んだ。
そういえば、最近は森川の話を聴いていなかったな、と考えていた。
いつも私が話すばかりで、森川はそれにじっと耳を傾けてくれていた。
圭都とのことを森川には直接伝えた。
いつもの調子で『そうか』と返事をしただけで、特に驚いた様子もなかった。
不思議に思って目を見ると、私から逃げるように目を逸らされた。
黒目の大きな意志の強い瞳。
他の人にはない、何か引き込まれるようなその目。
いつもは視線を捉えて離すことのない、不思議な感覚を持っている。
森川から目を逸らすことはほとんどないと言っていい。
その目が私の視線から外された時、少しだけ違和感を感じた。
けれど、すぐに視線が戻ってきていつもの森川の顔をしていた。
「時雨が落ち着いて、何よりだ」
「何よ、それ。人を暴れ馬みたいに」
「・・・せめて自分で言うなら、じゃじゃ馬くらいにしとけ」
「あ・・・」
安堵の表情と、柔らかい笑顔。
優しく笑う森川のその顔を見て、きちんと自分で伝えてよかったと、心から思った。