だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
こんな時にやっぱり想う。
言葉は無力なのだ、と。
何か伝えようと想っても、二人ともそれが言葉にならない。
それよりもこうして近くに感じて、傍で一緒に泣いて。
そうしている事で、伝わることが沢山あるのだと知った。
「言わなくても伝わるものは沢山ある、と想います」
涙を落としながら呟いた。
それを聞いて、圭都は私の頬に両手を添えた。
そして目を合わせないまま首を少し横に振った。
「確かに傍にいて伝わることは沢山ある。でも、大切なことほど言葉にしないといけないんだ」
その声は胸を詰まらせる声だった。
私は何も言えずにいた。
「今じゃないと言えない言葉がある。次でいいと想っていても、伝えられなくなることを知ってる」
胸が痛い。
『今』しか言えない。
『次』ではなく。
『また』の約束が果たせない苦しさを知っている。
私も、この人も。
「傍にいればわかる、なんて傲慢なのかもしれない。俺たちは伝える手段を持っているのに、それを上手く使えない。大切なことこそ言葉にしなくてはいけないのに」
この人の、誠実さがここにある。
傍にいることの尊さ。
言葉にすることの大切さ。
それを、知っている人。