だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「揺れたり、しないよ」
真っ直ぐその目を見つめて、私は言った。
揺らぐことのない精一杯の気持ちを込めて。
「櫻井さ――――、圭都がくれたものは、私にとって本当に必要なものだった。あの人が存在していることが、今の私を支えてる。代わりなんて、いないよ」
代わりなんていない。
これは、湊にだけ使う言葉だと想っていた。
湊へだけ向けるはずだった感情は今、全て圭都に向けられている。
口に出して初めて想う。
こんなにも大切で、こんなにも大きな存在になっていたのだ、と。
その言葉を聴いて、森川はそっと俯いた。
目を閉じているように見えるその顔は、満足そうに笑っていた。
少しの間そのままでいたが、すぐに顔を上げて私を見つめた。
黒目の大きな森川の目。
目を逸らしてはいけない、と本能で想う。
この目の中で、私はどんな風に見えているのだろう。
きっと、他の人には見せないところも、森川は知っている。
不安になった時。
苦しくなった時。
どうしようもない時。
支えてくれたのは、紛れもなく森川だったと思う。
そんな大切な人を失うのかもしれない、と。
なぜだか、そう想った。