だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「もし、そうだとしたら。どんなことをしてでも、櫻井さんと一緒に住んで欲しくないだろうな」
その言葉は、私を安心させるには十分で。
森川の気持ちが見えた気がした。
私の背中を押して、それでいい、と言った森川。
もし私を好きなら、そんなことはしない、と教えてくれた。
それが、森川の答えだと。
「残念か?俺の返事」
少しだけ笑って私を見る。
その目は、圭都がする意地の悪い目にそっくりだった。
「安心したに決まってるでしょ!からかわないでよ、もう」
抗議の気持ちを込めて放った言葉に、森川は肩を震わせて笑った。
そして、そのまま扉の方へ向かっていった。
声を堪えながら笑う森川の背中に、久しく聞いていなかったことを聞きたくなった。
「まだ、後悔してる?前の、こと」
ずっと引きずっている森川の気持ち。
前の彼女との別れ。
あの時の森川に、将来を考えるという、そんな余裕はなくて。
あの時の森川にとって、別れることしか出来なかったとしても。
あの時の気持ちは、まだ消えてくれていないのかもしれない。
立ち止まって、天井を見上げる。
どこにいても窮屈そうな身体だな、と思った。