だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「子供達が出て行ってしまうと、寂しくなるでしょう?だから、私もこうやって外で仕事をするようになったのよ」
「今までは、専業主婦だったんですか?」
「そうなの。だから、とても新鮮なの」
そう言って笑うおばさんは、確かに楽しそうに仕事をしていた。
「寂しくはなるけれど、その反面とても嬉しいのよ。私達が必死に育ててきた子達が、これから自分の足で生きていってくれるんだもの」
仕事の手を休めることなく、でもどこか遠い目をしながら、おばさんは言った。
私は、そのおばさんの顔をまじまじと見つめてしまった。
「どこにいても、何をしてても。元気で生きていてくれたら、それでいい。そんな風に思うようになったのよ。後悔をしないで、前を向いていてくれれば」
歳かしらね、と茶目っ気たっぷりに言ったおばさんは、とても優しい母親の顔をしていた。
目が合うと私も自然と笑っていた。
優しい家族の気持ちが流れ込んできて、心の奥がぽかぽかしていた。
どこにいても、何をしてても。
元気で生きていてくれたら、それでいい。
本当に、その通りだと思った。