だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
――――カチッ。『只今、電話に出ることが――――』――――
留守番電話のメッセージが流れて発信音が鳴る。
雨の音と発信音が鳴る音を、なんだか緊張しながら聞いていた。
『時雨ちゃん!まだ家にいる!?』
電話から聴こえてきたのはママの声だった。
慌てたような声に、私は急いで受話器に手をかけた。
「どうしたの、ママ?まだ、学校には行ってないよ。」
『あーっ!良かった!実は湊から連絡があって、風邪でダウンしちゃったらしいのよ。出来れば今日は家にいて欲しいんだけど、大丈夫?私も潤さんも、急患立て込んでて帰れそうにないのよ』
相変わらず早口で用件を一気に言い切るママの迫力は凄かった。
圧倒されながらも、湊がダウンしたことが気になっていた。
「湊、大丈夫なの?私、迎えに行った方がいいかな?」
『とりあえずタクシーでうちの病院に向かってるらしいから、病院まで来てくれる?』
「わかった。準備してすぐ行くね」
お父さんは脳外科医。
ママは内科の看護婦さん。
同じ病院の病棟違いで働くうちの両親は、いわゆる職場結婚だ。
具合が悪くなるといつも、二人の病院に向かった。
病院と両親がセットになっている安心感は、とても居心地のいいものだった。