だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
病院に着くとすぐにママの病棟まで向かった。
受付でインフルエンザ対策のためにマスクをした方がいいと言われ、マスクを受け取った。
息苦しくなるのであまり好きではないけれど、こればかりは仕方がない。
私を見かけたママが手招きをしているのが見えた。
走り出しそうになったが、病院だということを思い出して早足でママのところまで行った。
「ごめんね!時雨ちゃん!」
「大丈夫。なんだか学校へ行くのも嫌だなって思ってたの」
そう言うとママは少し複雑な顔をして、私の肩に手を置いた。
触れるママの手は細くて小さい。
「学校にはちゃんと行かないとダメよ。でも、今日はとても助かったわ」
ママの言いたいことも良くわかるので、私も少し困った笑いをして見せた。
今日降った雨は、私を足止めするかのようだった。
晴れていたはずの空から突然降り出した冷たい雨。
珍しいのもあったけれど、私はその雨を見て動けなくなってしまった。
湊の呼んでいる声のような気がして。
雨の気配は湊に似ている。
有無を言わせないしたたかさ、とか。
静かに近付いてくる空気とか。
やんでしまった後に切なくなる、あの感じとか。