だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「今、処置室で点滴してるわ。終わったら一緒に連れて帰ってくれる?」
「わかった。インフルエンザじゃないの?」
「違うみたいね。検査自体は陰性だったから」
「そう・・・。ねぇママ、傍にいたらダメかな?」
ママが嫌がることはわかっていた。
でもそんなもの関係なく、湊の傍にいたかった。
きっと眉間に浮かんでいるであろう皺を、そっと撫でてあげたかった。
「本当は嫌なのよね・・・、風邪だって油断ならないのよ?」
「お願い。傍にいてあげたいの」
でしょうね、と言ってママは笑った。
私がこんなことくらいで諦めないことを、ママはしっかりわかっていた。
「処置室は一応、一人部屋にしてあるの。あと二時間くらいは、点滴にかかると思うわ」
「ありがとう、ママ。わかってて一人部屋にしてくれたでしょ?」
さぁね、と言いながら、私を部屋まで案内してくれた。
ママの顔が少しだけ嬉しそうなのは、私が湊をとても心配しているからなのかもしれない。
病院でこんなことを思うのは不謹慎かもしれないけれど、そんな風に思った。
処置室の前に着くとママが立ち止まった。
この中に湊がいる。
ふとママの横顔に目線を向けると、ママの横顔に母親の顔が浮かんでいた。