だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「さて」
見た目とは噛み合わない声が聴こえて、私はびくりと身体を震わせた。
潤んだ目が私をじっと見ている。
熱が出ると、いつもより目の中が茶色く見えるのはどうしてだろう。
湊の目は、しっかりと私を捉えて離さなかった。
「さっき、母さんに何を言おうとしたのかな?」
目は笑っているけれど私を掴む手の力が笑っていない。
振り払うことが出来ず、その椅子から逃げ出すことさえ許してくれなかった。
何も答えない私に湊が苛々しているのがわかる。
熱があるせいで、理性が上手く働いていないのかもしれない。
「僕の質問、聞こえてるのかな?」
私の左手に込められた力は少し怖いほどだった。
どうしようかと頭を悩ませていると、不意に強い力が私を引いた。
「ちょっ・・・湊っ!」
そのままベッドに引きずられるようにして乗せられた。
と言っても、足は床に着いたままでバランスを崩した上半身がどさりと湊に乗り上げていた。
いつもより少し荒い湊の息と、熱のこもった手が私を動けなくさせる。
ぐっとベッドに手をついて起き上がろうとするけれど。
もう一度私を引き寄せて、そのままベッドに引き込まれてしまった。