だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
「湊、あんまり動いたら点滴が――――っ」
「そんなことより」
ぴしゃりと響くその声に、反論させてくれるつもりはないのだとわかった。
私は上半身だけベッドに横になっていて、湊は手をついたまま私の隣で座っていた。
見下ろされるその目線が、余裕のなさをつれてくる。
どうしてこんなにも頑なにママ達に隠したい、と思うのか。
私にはそれが理解できなかった。
いつもより離れた距離。
掴まれている左手。
湊を怖い、と思うのは久しぶりのことだった。
「母さん達には心配をかけたくないんだ」
「・・・だから、自分は無理をするっていうの?」
「何がいけない」
「全部、だよ」
私は、自分の意見を譲ることが出来なかった。
最近の湊の様子を伝えることの、何がいけないのか分からなかった。
湊は益々、表情を歪めていった。
私の左手に更に力を込める。
「――――痛ッッ!」
私の声にはっとして、湊は力を緩めてくれた。
少し柔らかく触れる湊の手はいつもの湊の手なのに。
その熱い掌に、少しだけ違和感を感じていた。
沈黙が包む病室。
湊は信じられないほど無表情で、私はそんな湊を見つめ続けていた。