だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
夕闇...ユウヤミ
「湊」
起き上がってそっと頬を撫でる。
掴まれていない方の手は、自由に湊に触れられる。
それを見て湊はそっと私から顔を背けた。
「ただ心配なだけの。湊との約束も守りたいけど、隠しているのも辛いよ。私は、どうしたらいい?」
何とか届いて欲しくて懇願する。
こんなにも心配で、こんなにも考えているのに。
湊はただ黙って俯くだけだった。
返事の返ってこないその横顔を、ただじっと見つめていることしか、今の私には出来なかった。
「ごめん」
ぽつりと言った言葉は、本当に謝ってくれた言葉でないことを、私は知っていた。
『ごめん』という言葉でいつも何かを誤魔化してしまう湊。
いつもなら、これで許してしまうけれど。
今日はそれではいけない気がしていた。
何より湊の身体のことなのだから。
「体調が悪い原因、湊は自分でわかってるの?」
明らかに今までと違う体調の悪さをしている湊。
確かに、前から休みがちだったり仕事をサボったりと自由奔放だったが何かが違う。
私の知っている湊は、こんな風に熱だけで朦朧とするような人じゃなかった。
こんな風に眉間に皺を寄せて、苦しそうな顔をすることもなかった。