だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
結局、点滴の二時間の間、私達はほとんど言葉を交わさなかった。
重い空気が流れるこの部屋から逃げ出すことも、熱にうなされている湊を救ってあげることも私には出来なかった。
ただ傍にいるだけでは湊の負担になっているということに、気付いていたけれど。
気付いた時にはもう、どうすることも出来ないほど湊との距離を感じていた。
――――――ガラリ――――――
「そろそろ点滴終わるかしら?」
扉が開くのと同時にママが病室に入ってきた。
明るい声に顔を上げたけれど、さっきまでの空気を引きずって上手く笑えなかった。
そんな私の顔を見て、ママは困ったように笑っていた。
湊は、といえば。
寝たふりをしていたけれど、かすかな物音に反応するほど意識がはっきりとしていた。
三十九度以上の熱があるのに。
そんなところにまで意識を使っているなんて。
湊の休める場所は何処にあるのだろう、と考えるばかりだった。
「点滴の間、ちゃんと寝てなかったわね?多少顔色はいいけど、あんまり調子は戻ってないじゃない。私の言う事は絶対っ!て、小さい頃から言ってるでしょ?」
「寝たよ、少しは」
反論した湊を見て、ママは小さくため息を吐いた。